Loading...

新規抗壁細胞抗体測定系の診断性能を検証する多施設共同観察研究

研究計画書

研究課題名
新規抗壁細胞抗体測定系の診断性能を検証する多施設共同観察研究

研究代表者名
丸山 保彦(藤枝市立総合病院 消化器内科)

事務局
伊藤 公訓(広島大学病院 総合内科・総合診療科)

2025/11/6 ver 1.1
2025/12/31 ver 1.2

目次

  • 0.研究の概要
  • 1. 研究の背景
  • 2. 研究の目的及び意義
  • 3. 研究対象者の選定および適格性の基準
  • 4. 研究の方法
  • 5. アウトカムデータの評価
  • 6. 統計的事項
  • 7. 倫理的事項
  • 8. 被験者の個人情報の取り扱い
  • 9. 試料・情報等の保管及び廃棄の方法
  • 10. 試料・情報の二次利用
  • 11. 安全性について
  • 12. 研究費とその由来
  • 13. 研究資金および利益相反
  • 14. 研究機関長への報告内容及び方法
  • 15. 研究実施体制
  • 16. 試験登録および研究結果の公表
  • 17. 参考資料・文献リスト

0 研究の概要

研究課題名:新規抗壁細胞抗体測定系の診断性能を検証する多施設共同観察研究
研究の目的:内視鏡にてAIGを疑い病理検査で診断を行ったAIGと非AIG検体について、新たに開発した抗壁細胞抗体測定系の診断性能を検証する。
研究デザイン:多機関共同観察研究(侵襲、介入は伴わない)

研究のアウトライン

各施設で採取された血清検体について、新規抗壁細胞抗体(anti-parietal cell antibody; APCA)測定系により抗体価を測定する。また従来のAPCA測定法である蛍光抗体法と抗内因子抗体(Anti-intrinsic factor antibody;IFA)についても測定を行う。

選択除外基準

制酸剤(H2ブロッカー・PPI・PCAB)内服中の症例・免疫抑制剤投与例など、担当医が不適切と認めた例。

評価項目

  • 1.主要評価項目.従来のAPCA測定法である蛍光抗体法と抗内因子抗体(Anti-intrinsic factor antibody;IFA)と開発試薬の測定を行い、感度、特異度、正診率を算出する。
  • 2.副次評価項目.内視鏡的および血清学的萎縮度別の新規APCA測定法の感度、特異度、正診率を確認する。

目標症例数及び試験期間

  • 1.内視鏡でAIGを疑い病理検査でAIG又は非AIGと診断された検体最低各30検体(最大各50検体)
  • 2.内視鏡所見AIG-atrophic stage(AIG-AS)の各期(0-1期、2期、3期)について最低5検体(最大50検体)

※1、2の検体は兼ねることが可能である。期間中に収集できなかった場合は、収集できた検体のみで解析を行う。
検体収集期間: 2020年12月31日~2026年9月30日

1. 研究の背景

現在のAIG診断基準は、内視鏡所見ならびに組織所見という形態診断が基本となっている。ところが、高度萎縮の H. pylori 既感染胃炎とAIGとの鑑別においては、AIG正診率は 61%であったと報告されている。さらに組織学的診断においては、生検採取部位や標本作成プロセス、さらには病理医の専門性の違いにより、診断のばらつきが生じることが懸念される。加えて、胃がん検診目的の内視鏡検査においては、非腫瘍性疾患の診断のために胃生検を実施することは適当ではないとされており、組織学的検査によるAIG診断には制約がある。

一方、血清学的診断は客観性・再現性に優れており、その有用性が期待される。ところが現在の血清診断(APCA測定系)は、ラット胃を用いた蛍光抗体法であり、再現性に疑問がある上に偽陽性率が高いことが報告されている。AIG診断基準においても、抗壁細胞抗体は「10倍以上を陽性とするが、偽陽性を考慮し今後変更される可能性がある」と明記されている。

正しいAIG診断のためには正確で客観性に優れた血清診断法の確立が求められる。そこで広島大学を含む多施設共同研究として、「AIGの診断に資する抗壁細胞抗体新規測定系の開発」が実施された。既に先行研究において、AIG症例におけるAPCA의 主要な自己抗原はプロトンポンプβサブユニットであることが明らかとなっていた。そこで抗原として、ヒトプロトンポンプβサブユニットから設計した組み換え蛋白を作成し、ラテックス比濁法を基本原理とした抗体価測定系を開発した。ラテックス比濁法は、既存の蛍光抗体法に比べ、広く普及している生化学自動分析装置を用いることが可能であり測定時間も極めて短時間である。さらには、目視による判定ではないため、客観性、再現性に優れている。両法のAIG診断能を比較したところ、特異度、正診率においてラテックス比濁法で優れた結果が得られている。しかし、進行期のAIGと類似する高度萎縮の H. pylori 既感染胃炎や、萎縮の乏しい早期AIGなど診断が難しい内視鏡疑診例などとの鑑別能や萎縮の進行度(AIG-AS)別での診断能については未だ明らかになっていない。

2. 研究の目的及び意義

本測定キットを用いることにより内視鏡疑診例に対するAIGの診断を客観的かつ正確に実施することが期待される。またAIGの病期ごとの診断能を確認することにより、本マーカーの特徴を知り、適応対象となる好適病期を知ることができる。本測定キットは2025年11月より販売されており、本測定キットが臨床で広く使用され、AIGが客観的かつ正確に診断されることが期待される。

3. 研究対象者の選定および適格性の基準

1)選択基準

  • 上部内視鏡検査によりAIGを疑い病理検査を実施した検体。
  • なお、病理組織学的診断は日本消化器内視鏡学会の附置研究会「A 型胃炎の診断基準確立に関する研究会」の「自己免疫性胃炎の診断基準」に従い行う。
  • 登録症例が入力必須項目を満たしている。
  • 客観的に評価できる適切な内視鏡画像が記録されていること(胃体部の見下ろし像と見上げ像でROMの病期が判定でき、胃体大彎のヒダが離れる程度に十分な送気量で観察されているもの)。

2)除外基準

  • 1) 免疫抑制剤投与例
  • 2) 制酸剤(H2ブロッカー・PPI・PCAB)内服中の症例(要wash out期間:3か月)
  • 3) 内視鏡的なROMの広さの客観的評価が困難な例
  • 4) 本人または代理人から参加拒否の申し出があった場合
  • 5) 本研究責任/分担医師が本研究の対象として相応しくないと判断した症例

3)目標症例数

  • 1.内視鏡でAIGを疑い病理検査でAIG又は非AIGと診断された検体最低各30検体(最大各50検体)
  • 2.AIG-AS (0-1期、2期、3期)各期について最低5検体(最大50検体)

4. 研究の方法

研究のデザイン:多機関共同観察研究(侵襲、介入は伴わない)

空腹時採血を行い、血清を中央測定施設(富士フイルム和光純薬株式会社)に送付し、その後委託施設(富士フイルム株式会社)又は外部施設にて、APCA測定(ラテックス比濁法と蛍光抗体法)とIFA、PGI/II、Hp抗体測定を行う。残余血清は測定施設において破棄する。測定結果は中央解析施設(広島大学)に連結可能匿名化処理を行い、送付する。病理学的評価は1名の病理医により中央判定する。

研究実施期間:承認日~2027年3月31日

研究に用いる患者情報

  • 基本情報:生年月日、性別、合併症、過去の手術歴、内服薬、Hp除菌歴
  • 内視鏡所見(必須):残存胃底腺粘膜(ROM)病期 (AIG-AS:0期、1期、2期、3期)
  • 血液検査所見(必須):採血日、Hb、MCV
  • 血液検査所見(任意):Fe、ビタミンB12、フェリチン、ガストリン、血清Hp抗体価、甲状腺疾患の有無等
  • 病理所見(必須):前庭部大彎、胃体中~上部大彎

5. アウトカムデータの評価

1)主要評価項目

1.上部内視鏡検査にてAIG疑い病理検査を実施した症例について、従来のAPCA測定法である蛍光抗体法と抗内因子抗体(IFA)と開発試薬の測定を行い、病理検査を基準とした時の感度、特異度、正診率を算出し、比較することで開発試薬の臨床有用性を確認する。

2)副次評価項目

  • 1.主要評価項目1について、内視鏡的萎縮度AIG-AS(0-1期、2期、3期)毎の開発試薬の感度・特異度・正診率を算出し、開発試薬の内視鏡的病期毎の診断能を明らかにする。
  • 2.主要評価項目1について、血清学的な胃の萎縮指標(PG1/2比)と開発試薬の感度・特異度・正診率を比較することで、開発試薬の血清学的萎縮度による診断能を明らかにする。

6. 統計的事項

AIG-AS各病期グループ間における上記評価項目のノンパラメトリック検定および必要な調整を行う。必要に応じて、広島臨床研究開発支援センターにコンサルティングを依頼する。

7. 倫理的事項

本研究は「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施する。研究参加については、研究参加施設のホームページで情報公開文を掲示し拒否機会(オプトアウト)を提供する。

12. 研究費とその由来

抗壁細胞抗体、抗内因子抗体、PGI/II、Hp抗体等の血液検査の測定、測定病理検査に関する費用は富士フイルム和光純薬株式会社が負担する。

15. 研究実施体制

15.1 研究代表者:丸山 保彦(藤枝市立総合病院 消化器内科 副院長)
15.2 研究事務局:伊藤 公訓(広島大学病院 総合内科・総合診療科)
15.3 共同研究施設:
川崎医科大学:春間 賢
富士フイルム株式会社・富士フイルム和光純薬株式会社:大橋利成、坂本知隆、花井一馬、大窪喜丸、板井友和
加古川中央市民病院:寺尾秀一
藤枝市立総合病院:丸山保彦
湘南鎌倉総合病院:佐々木亜希子、隅田ちひろ
春藤内科胃腸科:春藤譲治
株式会社ピーシーエルジャパン:渡辺英伸

17. 参考資料・文献リスト

  • 丸山保彦,他:自己免疫性胃炎の内視鏡診断.─早期,中期,終末期の内視鏡所見.AIG-atrophic stage(AIG-AS)の提案.胃と腸 59: 34-46, 2024.
  • 丸山保彦, 他:自己免疫性胃炎の内視鏡診断 日本消化器病学会雑誌 119; 511-519, 2022.
  • 対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル(改訂第2版):日本消化器がん検診学会, 2024
  • 鎌田智有 他: 自己免疫性胃炎の診断基準に関する附置研究会からの新提案 日本消化器内視鏡学会雑誌 65; 173-182, 2023
  • Ito M, et al: A new anti-parietal cell antibody titer measurement kit for diagnosis of autoimmune gastritis. Digestion. 2025.

 

★自己免疫性胃炎研究案_ver1.2 202512312